映画館で大地震が起こった

 池袋にあるヒューマックスシネマという、ビルの8階にある映画館で、『英国王のスピーチ』という映画を観ていたときである。突然映画館全体が大きく揺れ始めた。そのうち収まるだろうとタカをくくっていたのだが、一向に揺れが収まらない。
 だんだん不安になってきたので、急いで席を立ち出口へと向かった。すると次々と逃げ出す人が増えてくるではないか。廊下に出ると更に激しい揺れが起こってきた。それで思わず壁の近くの床にへたりこんでしまったのである。
 たぶんこのビルは崩壊するに違いない。俺は今日ここで死ぬのだろうか。もの凄い恐怖感と絶望感が襲いかかってくる。死神が俺を呼んでいるぞ! もうだめだと覚悟を決めると、少し揺れが穏やかになってきた。そのときやっと従業員が非常口の扉を開けてくれたのだ。8階から非常階段を下りながら、思わずニューヨーク9.11の光景を思い出してしまった。
 やっと地上に降り立ってホッとしたが、その後も余震が続き電車は全て止っている。ケータイは使えないし、公衆電話は長蛇の列だ。それでも30分位並んで家に電話したが応答音さえない。まさか、まさか家が崩壊してしまったのだろうか。不安・不安・不安でかなり心が折れてしまった。そのうえデパートをはじめとして全てのビルがシャッターを下ろし始めたのだ。外は木枯らしがピューピューと吹きすさんでいる。
 そのうえJRも私鉄も全く動く気配がないし、現情報も今後の対応も教えてくれないし、駅の地下通路も封鎖すると言う。公共機関からは何の通報も連絡もない。このまま路上で凍りつくしかないのだろうか。
 少なくとも新宿まで戻りたい。だがバスもタクシーも超大行列で、明日まで待っても乗れそうもないだろう。それで明治通りを新宿へ向って歩くことにした。皆考えることは一緒で、狭い歩道は歩行者で超混雑している。ビルの上からの落下物に注意しながらやっと新宿に着いたのは、池袋を出て約1時間15分後であった。
 京王線小田急線をあてにしていたのだが、両線とも復旧は夜中の12時頃となるらしい。まだまだ時間がだいぶあるので都庁まで歩いて暖をとることにした。都庁はかなり空いていて、ゆっくり腰かけて休むことが出来た。・・・と思う間もなく、いつの間にか次々と人々が押し寄せてきて、配給されているダンボールの争奪戦になってしまった。2時間ほど休んでいると、TVで京王線が動き始めたと放送しているではないか。
 すぐに立ち上がり新宿駅に向かった。さすが京王線だ。地下鉄以外では一番の復旧である。だから京王線が大好きなのだ。バンザイ京王線!かくして家に着いたのは1時半。電話の反応がなかったのは停電のためだったらしい。お疲れ様でした。
 まさに地獄のフライデーだったが、東北地方の方々が受けた傷跡に比べればほんのかすり傷にもならないだろう。だがこの体験を教訓にして、今後は個人・企業・行政・国の全てが一体となり日本を再生して行かねばならない。いずれにせよ今回ばかりは他人事とは思えない。最大の被害を受けた東北地方の方々には、心の底からお悔やみ申し上げます。
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